「病気が愛すべき存在だと?」多くの方はそう思いますよね。
確かに病気にはならないに越したことはないですけれども、現実に多くの人がこの病気に罹っています。歯周病は、細菌感染症ではあるのですが、生活習慣病でもあります。生活習慣を変えない限り治ったことにはなりません。
それはいとも簡単に再発してしまうものです。「治ったとは何か」それを追い求めていくと、再発しない生活習慣が定着したことになります。
生活習慣を変えることは、その人の意識を変えない限り無理な話です。相手は立派な大人です。脅しや褒めるだけではそのモチベーションは長くは続きません。
歯周病には、完治はないといわれていますが、患者さん自身の「また悪くしたくない」という思いの分だけ、歯周病は再発から遠のいていくのです。
歯周病が進行した状態では、症状が出なくてもメンテナンスを長期に続けられなければ、いつかその歯はこの世の中から姿を消します。病気とも長いお付き合いです。
そうしますと、私たちの仕事のフィールドは確かに口の中ですが、働きかける対象に患者さんの心あるいは意識も入ってきます。
そして、人の気持ちは複雑でして正論は、決して正解ではないです。一つの言葉を投げかけても多くの反応が返ってくる。そんなさまざまな患者さんとの人間関係のなかで歯周病の治療の成果が決まってくることがあります。
だから、突き詰めていくと人間理解・人物評価・人間観察、これができないと中等度以上に進行した歯周病をよくすることは困難を極めます。
「だから面白い」「だからやりがいがある」そう思っています。
やってもやってもやりがいが尽きない、これが歯周病治療の醍醐味です。
やり続ければ以前見えなかったことが見えてくる これがこの仕事の楽しみの一つです。
- 理解の早い人 遅い人 すぐ忘れてしまう人といつまでも覚えていてくれる人
- 筋道を立てたお話が受け入れられる人、そうでない人
- 共感を必要とする人、そうでない人
- すぐに自分で決めたがる人 すぐに依存をしてしまう人
- フワッとした明るいイメージが感じられればすぐ動き出す人どこまでも慎重な人
- すぐに手が動ける人 分かっているけれど手の動きが良くない人
それぞれにはたらきかける言葉が変わらなければ、患者さんの思いは変わることがない。
「この人たちの言葉を受け入れてみよう」、そのように感じ取っていただかなければ、何時までもいい状態を作ることはできないことを身に染みて感じています。
このような特別な信頼関係がなければ治療できないのがこの歯周病ではないでしょうか。
汚れとりや歯石除去(要するに掃除をする人)これだけでは、この仕事はつまらないものになります。多くの歯科衛生士さんが、資格がありながらこの世界から離れてしまうのも 私たち歯科医院の院長が汚れとり以上の仕事を歯科衛生士に教えていないからではないでしょうか。
そりゃそうだよね。汚れ取りだけでは、やりがいが続かないでしょう。
人間観察・人物理解、そこに対象がいくと同じ人は1人としていない。みんな違う。
だから、いつまでたっても尽きることのない仕事の楽しみが待っている。
そして、私たちが年齢を重ね生活体験が増えていくと同じような生活体験をしてきた患者さんと共感や接点が増え、そのことが相手の立場に立つこと患者さん目線に立つことに繋がり、さらに深く信頼関係を構築できることになると考えています。
この患者さんは、結局のところ何を求めてこの医院に来院されているのか?
そこを聞き切るところから始まることが、歯周病治療のスタートです。
進行した歯周病は、ある程度「医療者が年齢を重ねないと治せない」そう断言できます。
薬で治せる?「治った」とは何か?長期に渡って、いい状態を維持することです。歯周病は、ずっと薬漬けにされて治るものではありません。そもそも塗るだけあるいは飲むだけで治るような薬は存在していません。
歯周病を治す為には、医療者・患者さんともに根気が必要です。
このようなスタイルで歯周病治療をしていると、それだけでつい人間観察をする癖が付き、人物評価の精度が上がってくることによって、いわゆる人を観る目も上がってくるのではないでしょうか。仕事を離れても人の見立てができれば人生の失敗は少ないかもしれない。
だからこそ人が好きな人、人と話すことが苦にならない人は、私たちの歯周病治療が向いていると感じています。
「会いたい人とまた会える」、「そんな付き合い方が出来る歯科医療を実現したい」こんな思いで、医院のスタイルを作り上げてきました。
わかっていただけたでしょうか。だから、この仕事を長く続けたい人は、歯周病を愛すべき疾患と考えるのです。
人って面白い、患者さんの言葉は宝の山、私たちに多くのことを気づかせてくださいます。ホントに実感しています。患者さんありがたいです。ずっとお付き合いをしていきたい患者さんがたくさんいます。それも歯周病という病気が接点となったからです。
そして、私たちがこのような診療理念で働きかけているからです。
どうでしょうか ご理解いただけましたでしょうか?
患者さんを笑顔にしてあげられる歯周病治療、まだまだ分からないこともありますが、これからも歯周病と正面から向かい合っていこうと考えています。