秦野の歯科 わきた歯科医院 ブログ 東京マラソン2013

2014年も完走しました!

2012年2月27日 始めての東京マラソン完走の次の日の朝
目覚めた私の下半身から自由は奪い去られていた
筋肉痛なのか風邪の初期症状なのかそれともこれが初体験のインフルエンザの関節痛なのか 寒気のような異常な感覚 ふくらはぎの小刻みな震えが止まらない
歩くことはできるけれど激痛 とくに階段の降りは怖い 手すりにつかまらないと身体を支えられずに下まで転げ落ちそう
大事を取って月曜日は休診にしておいてよかった
人はスポットライトを浴びるとやっぱり嬉しいんだ 芸能人一度やったら辞められないとはこのことなのかも 醜いまでの筋肉痛に見舞われながらも頭の中はまだ興奮状態覚めやらず 録画したマラソン関連の番組やニュースを見返す
その中になにもそこまでと思えた光景が報道されていた
今回の東京マラソンはロンドンオリンピックの代表者選考レースになっていた
多くの人がその勝利を期待し応援したランナーが惨敗した 公務員ランナー川内優輝選手だ スーツ姿でツルツルに頭を丸めてきて彼は記者会見に臨んだ 敗因はいろいろ取りざたされたが 一切弁明をしなかった
「申し訳ない けじめをつけたい 期待にこたえられなかった 誠意を示したい」
眼光鋭く力強いことばで会見を締めくくった
同じ日に同じマラソンコースを走ったランナーの端くれとして、彼から正しい負け方を教わった気がする。確かに勝負は時の運だ。負けたときにこそ人間性が問われる
あの会見を見て今まで以上に彼を応援したくなった 次につながる惨敗であって欲しい

マラソンはスタートだけが始まりではない
そしてゴールは終わりだけでなく次のスタートにもなる

そうです 私の想いはひとつ またあの舞台に戻る たとえどんなにきつくても だ!
ということで再び挑むことになりました東京マラソン2013
1回目ほどの不安や緊張はないものの 経験したからこその怖さも持ち合わせている
前回よりもトレーニングをした自負もある 事前の対策もさらに緻密になった
今年もいっぱい写真を撮っておこうとカメラを構えたその時 なんとデジカメのシャッター部分が閉まったままレンズが隠れっぱなしになっているのに気づいた 「アイヤーしまったー」 このままスタートするか修理するか 当然修理できるお店は開いていない 一計を案じ ダッシュで会場を後にして近くのコンビニへ 瞬間接着剤を購入し店員さんにドライバーを借りて 壊れたシャッター部分をこじ開け 再び閉まらない様に強引にカメラ本体に接着剤で固定する事 数分 何とかこれで撮影可能に ふと我に返り時計を見ると なんとランナー整列時間を過ぎているではないか あわててダッシュで会場に戻ろうとすると 係りの人に制止されて入れない 「あちゃー 走れないの?」顔面蒼白一歩手前 必死の思いで事情説明をし 半ば強引に制止を振り切って会場に再進入 本来の出発ゾーンであるKゾーン(ゴールの自己申告タイムによってAからKに事前に割り振られている)に入ろうとしても時間オーバーで入れない 係りの人に誘導され結局行き着いた先は遅刻者の吹き溜まりのような待機スロープからのスタート 3万6千人の中で後ろから数えておよそ100番目くらい ロスタイム何分だ?
まさかの展開とダッシュの繰り返しで心身のダメージはかなりなもの
そこに襲い掛かるのは新宿都庁の合間から吹き抜けるビル風 これが北風で容赦ない 押さえてないと帽子が飛んでいく 発表では気温4度だが 体感気温はおそらく氷点下 ここで数十分待機 たまりかねてトイレに駆け込むランナー続出
昨年同様スタート地点の上空は今年もヘリが飛び交う 深呼吸をして落ち着かせる
今年のウエアは赤だ 昨年はGOサインの青とGOLDメダルの金を合わせたが 歴女の娘 イチ押し真田幸村の戦衣装の赤備えがモチーフだ 遠目でもそれとわかる赤を纏った
9時10分スタートの号砲がなった ぜんぜん前に進んでない いたずらに時間だけが進む2回目でなかったら あせりで 自分を失っているかも 20分以上遅れてスタートラインをまたぐ スタート直後の大歓声が嬉しい 笑顔に戻れたか
2キロ地点通過 あと40キロの表示が見える あと40キロも走るのかと考えると距離の長さに押しつぶされそうだ なんだか今日は身体が重く感じる この向かい風が原因か
それとも体調は良くないのか 更に風が強くなってきた 帽子やゼッケンが飛ばされ逆送しながら追いかけているランナーがいる
市ヶ谷付近 昨年同様家族が激励に来ていた 本当にありがたい 子供たちの目に私がどのように映っているのか いつまでも記憶にとどめていて欲しい 家族全員の記念写真を撮る 完走を誓う 力が涌いてくる 無理に笑顔を作っていたがこのあたりから右ヒザ外側が痛み出していた 腸頸靭帯炎 いわゆるランナー膝だ 過去にこれが原因で2年近く走れなかったことがある古傷だ 右足に力を入れるとまるで釘を打たれたように痛い
あわてて鎮痛剤を服用する 効いてくるのは30分後だ 間に合うのか
10キロ付近からスピードが目に見えて落ちてくる 痛みが気力と体力を奪っていく
右前方沿道の応援する人の中にひときわ大声で「がんばれー大丈夫だー」とまさに絶叫している人がいた 有森裕子さんだ 早速近づいて 立ち止まって最敬礼 両手で握手をしてもらう 「感激です 私が走るきっかけはあなたです お会いできて光栄です」とまくし立てる 「頑張って完走してください」とありがたい激励をいただく 「自分で自分を褒めたい」の 有森さんから褒めていただいたようで心が軽くなった
それでも膝は良くない 膝が気になって集中できない 時計を見る 予定時刻から少しずつ遅れている あんなに練習したのにと思うと暗澹たる気分が自分を支配する
走ることが全く楽しくない この痛さは勘弁してほしい 少しずつ視界が狭くなってくる 14キロ付近ついに歩いてしまったここから歩いたのではゴールには到底たどり着けない

イエスさま それにしても なぜ?

イエスさま それにしても なぜ?

ここで止まっても誰に迷惑をかけるわけでもないし
このまま無理に走って膝が壊れたらその後の事もあるし
‘その船は 今どこで ボロボロで進んでいるのか’ 中島みゆきさんの宙船(そらふね)の歌詞だ 繰り返し歌って自分を鼓舞する
完走できなくても決して恥ずかしくはないはずだ
ネガティブが頭を支配し始めると もう行けない
もう1錠痛み止めを服用する 効いてくれ と祈る想いだ 少しでも頭を 快 の状態にするために キャラメルやチョコを立て続けに口の放り込む
少し歩いてはまた走ってみる その繰り返しだ
このまま止まったらこんなに楽なことはないのに・・ 誰も私を責めないだろう
一度歩くのを止めたらもう走れないような気がする
まさかこんなマラソンになるとは思わなかった
残りの28キロを考えると心の中の最後に残った何かが折れるような気がする だから作戦を考える
とにかく目の前の1キロにしのぐ そこで余力があれば次の1キロをどうにかする
できなかったときの言い訳を100並べても 子供たちは喜ばない それはわかっている
完走メダルを持ち帰らなくても子供たちは頑張ったねと言うだろう それもわかっている
しかしこの痛い一歩がゴールに結びつくのか確信が持てない
‘流されまいと逆らいながら 船は挑み 船は傷み‘ 宙船は私の人生の応援歌になった
余裕がない 全くなくなった トボトボ歩いていると次々抜かれる 誰かがポンと肩を叩きながら 抜き去っていった 何だ? 何かの激励か つらいのはお前だけではないとでも言いたいのか? この膝でどうしろと言うのか 時計を見るとどれだけ心身ともに追い詰められているのかがわかる 何の誤魔化しも出来ない 受け容れがたい結末が近づいてくる  いよいよ これで 万策つきた・・ 訳ではない 2本のベルトを用意してきた 痛む膝の上に巻きつける 祈る思いでしびれるほどに縛りつける それでも痛みが取れるわけではない 膝の動きが良くなるわけでもない しかし これで右ヒザに力をかけられるようになってきた これで何とかする  すこしづつでも走りにリズムのようなものが戻ってきたようだ 向かい風が少しやんできた スピードが上がってきた 薄日が差してきて気温も上がってきたような気がする 身体が温まってきたのか軽くなったようだ 何て楽なんだ
‘その船は 舞い上がる そのときを 忘れているのか’ 宙船の歌詞を繰り返す
中間地点は越えられた せっかく与えられたチャンス 自分から棄権することだけは止めようと考えを切り替える 関門で制止されるところまでとにかく走ってみる
痛みがなければ自分は走れる 練習で走った距離が自分を動かしている 自分の体の中の強さを確信する
30キロを超えた 勝負どころの35キロ関門の越えると 足を引きずってでも 這ってでも ゴールにたどり着ける  残り5キロにすべてをかけると決めた もう後先考えない これまでの不本意な走りに対しての忸怩たる想いをぶつける
リミッターをはずせ 自分の強さを信じて開放しろ 風を感じろ 自分を駆り立てろ
ポジティブで頭の中をいっぱいにしようと無理に言葉をならべる
‘その船を漕いでゆけ お前の手で漕いでゆけ お前が消えて喜ぶものにお前のオールをまかせるな’
自分の走りに集中する レールの上をすべるような心地よさだ これがランナーズハイか どこまでも走りきれるような多幸感だ
颯爽と空気を切り裂くイメージだが 周りから見ればぐだぐだな走りかも
関門を越えた 立ち止まり後ろを振り返る 非情な関門封鎖の光景だ 1秒の容赦もない
築地本願寺の前 人だかりができている 誰か有名人だ 近づいてみる 高橋尚子さんだ
早速 立ち止まって最敬礼 両手で握手をしてもらう 「感激です 私が走るきっかけはあなたです お会いできて光栄です」とまくし立てる ん? 有森さんにも同じこと言ってないか? でも 間違ってはない 実は有森さんと高橋さんとこの私にはユルイけれど
共通点がある 彼女たちを育て上げた小出義雄監督だ 小出監督は 私の佐倉高校時代の体育の教師で忘れられない小出先生なのだ サッカーの授業でも50m走の計測の時にもその他でも良くこの私を褒めてくれた 褒められるってすごいことだ 「なんだ お前サッカー部だったのか 良く決めたなぁ」 褒めて下さったせりふも30年たっても覚えている 先生は当の昔に忘れているだろうけれど 私はあと30年でも覚えているはずだ 今こうして満身創痍でも前を向いて走っているのは 間違いなく小出先生の かけっこ大好き精神を受け継いでいる ここでも感謝だ
ゴールが見えてきた よく頑張った おれのこの体 完走したいという 心のわがままと意地によく応えてくれた 立ち止まり足全体をさすってあげる 後ろを振り返りここまでのコースを見える限り見渡す 一呼吸おいて  渾身のガッツポーズでゴールラインを突き破る
東京マラソン2013 ゴーーール!!!

東京マラソン2013 ゴーーール!!!

完走と言っても途中で歩いているからそんなに胸をはれない だけれども時間をかけないとわからないこともある 前回も感じたけれど なぜこれほどまでに多くの人が熱い思いで応援してくれるのか? この場を借りて皆様に感謝の気持ちを伝えたい

東京マラソン2013
東京マラソン2013
東京マラソン2013

そしていろいろな声がある
「昔 走っていたけれど 今はまったく みんなが走る姿見てたらきっかけになりそう 頑張ってみる」
「家族が前 マラソンやってた マラソン見てたら応援したくなる」
「抽選で外れた 走れるのがうらやましい 自分の分も頑張ってほしい 自分もランナーだから苦しいのはよくわかる だから応援する」
この過酷な42キロが 人の善意を引き出すのであれば マラソンは偉大だ 私が好きでやっている理由のひとつはこのことかもしれない
色々あった 不完全燃焼のマラソンだった これもはじめから用意されていた結末だったのか 何とかしのいで最低限の結果だけでも出せたのは誇りだ これからも走りながら生きていこう 東京だけでなく 北海道や那覇のマラソンも面白そうだ 海外にだって市民マラソンはいっぱいある 走れれば夢はまだ広がる

東京マラソン2013
東京マラソン2013