私の医院には日頃から多くの患者さんに来院していただいています。
日本に1億2千万人以上の人々が生活している中で、この方々と接することができるのは間違いなく何かの縁なのでしょう。これは10余名いる私の医院のスタッフや出入りしてくれる皆さんに対しても同じ思いをいだいています。
歯科治療という仕事をしていなかったら、間違いなく言葉を交わす事がなかったであろう人々と、仕事を介して人生の機微を教えてもらったり、私の狭い視野を広げ、思考の枠組みを太くしてもらえることもあります。

特に高齢者と呼ばれる年代の方々には、戦前戦中戦後という大きな時代の変化を乗り越えてこられたためか、話していただく内容は、平穏な人生を淡々と生きてきた私からは及びもつかないたくましさ、強さを垣間見ることもあります。話を聞ける状況が整っていればもっと聞いていたい話でも、なにぶんそれでは仕事にならないので、話の腰を折ってしまったりして申し訳ないし、もったいないと感じています。
私たちの医院の財産は、来院していただいている患者さん一人一人で、皆さんによって私たちの医院は支えられていることは紛れもない事実です。

毎日の臨床の中で、誰に一番教えをもらえているかと言えば、それもまた一人一人の患者さん以上の存在はありません。
一日の仕事の終わりには、その日来院された方々の健康や安寧に思いをはせながら医院を後にして帰路につく毎日です。
そのような患者さんとの出会いのときである初診は私にとって少し緊張を伴なう楽しみな瞬間でもあります。