今年の春ほど桜が待ち遠しい春はない

二人の子供が同時に受験で鬱屈した生活をしていたし ごく近い大切な人が思いがけず大きな病気に直面してその退院が春だからだ

結果が出るまでじりじりした毎日の中 それでも新聞は隅々まで読む生活をしていた その中人一倍目立つ全面広告があった

「ザヒットソングメーカー 筒美京平の世界 コンサート開催決定」

子供時代はあまりテレビを見る子供ではなかったけれど TBSのザ・ベストテンや日本テレビのトップテンなどの歌番組はよく見ていた 筒美京平さんの名前は作曲家として本当によく目にする名前で 筒美さんって3人ぐらいいるんじゃないかと本当に思っていた(以下失礼ながら 各氏敬称略させてもらいます)

3月初めのその広告を隅から隅まで見渡すと きっとこれってすぐ満席になるよね だけどまだ子供たちの受験が先が見えないこの時期 開催は4月だけれど どうも行く気にならなくて 残念だけどまたの機会があれば と思い涙をのんでスルーしていました

その後も同じような全面広告が日をちがえて何度何度も目にして 筒美京平が私のことを呼んでいるのでは とさえ感じていたけれど 3月も終盤に近づいても子供の進学先がまだ決まらなくて こちらはそれどころではない

そして4月になってすべてが氷が解けるように解決し重荷から解放され 「もし空席が残っているなら行ってみない」と妻に話しかけていた

そのあくる日 開催まであと一週間を切っていた日 チケット好評発売中 の広告を小さく発見 妻にお願いしてチケット2枚確保 会場のすごい後ろの方だけれど コロナ窩の中のコンサートってどんなのか 想像つかないけれど マスク持参で行ってみました夫婦二人でコロナウイルス蔓延中とされているこのご時世 エンタメ久しぶり
場所は東京国際フォーラム ホール A 参加予定歌手を改めて確認してみる

全員共通しているのは作曲が筒美京平であること

郷ひろみ 野口五郎 斉藤由貴 岩崎宏美  松崎しげる 太田裕美 大友康平 庄野真代 麻丘めぐみ 大友康平 その他大勢 ジュディの名前もある ジュディってあのジュディオングだ 全員が往年の名曲を目の前で一堂に会して歌ってくれるなんて まるで夢のようだ 

私と同じ世代の歌番組大好きだった方々なら この興奮共有してもらえると思う これってすごくない

イベント当日が来るのを指折り数えるなんて久しぶり 人間って気持ちの張って本当に大切 その日までの数 日これがあると思うと何があっても乗り切れる

当日 待ちきれなくて 銀座で数時間を過ごす 人の流れも回復傾向で何より会場はほぼ満員最後列ぐらいしか空席が無くとりあえず消毒用アルコールは置いてあり「マスクしてください 歌わないでください」のアナウンスが繰り返されるけれどそれ以外コロナ前と何も変わっていない

ほぼ満員 ムッチャ蜜状態 これが許されるなら何でもありかと 聴衆の平均年齢高め ボリュームゾーンは60代後半から70代ぐらいか だからなのか途中休憩のトイレが大混雑で みなさん間に合いましたか?

生バンドの演奏 プロの生の歌の力づよさ エンタメの持つパワー 自分の中に眠っていた 何かが大きく揺さぶられる気がしました 口パクなんて一人もいない プロがみんなしのぎを削り合う真剣勝負に立ち会った気分

同じ曲を聴いても人によって思い出される光景はきっとさまざま違うけれど その曲がヒットしていた時代の空気はみんなが共有していたもの 聴衆の皆さんと その曲がヒットしていた時代に一気に戻され まるで同じ空間時間を共有してた同窓生が集まる同窓会に出席したような感じ

同志が集結して その曲に合わせて コロナだから歌えないけれど 拍手したり 体を動かしたり 足踏みしたりで思い思いに楽しい時間を最高に自分のスタイルで楽しんでいる

改めて筒美京平ってすごい ボキャブラリーが貧困で申し訳ないけど 人の気持ちを大きく動かして その曲を聴いている瞬間は 取り敢えず何も考えず幸せになる 聴き終わると その曲聴く前と 物事の捉え方が変わって すっかり気分転換になっている 一人の人の才能と時間がこんなにも多くの人を幸せにできる

作曲の世界はよくわからないけれど 筒美京平は外国の音楽を 日本人向けにわかりやすく導入しているらしい オリジナルって模倣の編集と言われることもあるけれど 結局それでもいいのではないか

人の記憶も呼び覚ます その曲にかかわる様々な記憶 忘れていたエピソードや 誰かの言葉 自分のその時に考えていたことなどが あふれるように思い出される 小学生や 十代の頃 自分の身体や自意識が大きくなるにつれて 自分にも大きな可能性があると信じ始めていたころ なんだか意味が分からないけれど ガーっと何かができるような気分が上がっていくときに聞いて歌っていた曲に 何十年ぶりかに対面すると 今の自分にもまだまだ 自分にできる事があるはずだと 気が上がりだす

最近 『黄金の60代』という本を買って読みだした 著者は郷ひろみ だ 内容はともかく自分も黄金の60代を迎えるために取り敢えず何か小さいことでも始めてみようと思い立ち 利き手でない左手で箸を持ち食事をするようにし始めた 小さなことなんだけれど これができるようになったことが意外にうれしい そのきっかけとなった郷ひろみが 目の前で歌っている 芸能人は なんであんなに年を取らないんだろう 若い時のイメージをそのまま残して声量もほとんどの人が変わらない あえて言えば成熟だけど老化劣化などとは対極にある郷ひろみ 野口五郎 御三家と言われていた二人の歌に酔いしれる

当然自分も歌える♪会えない時間が 愛育てるのさ 目をつぶれば君がいる♪ 小学生の自分が意味も分からずこの歌を歌っていました

御三家と言えばそれにしても西城秀樹 ああ ヒデキはなんで死んでしまったのだろう 筒美京平の楽曲ではないけれど 西城秀樹のヤングマンには本当に救われた 鬱々としていた当時の自分になんだかわからないけれど単純なパワーや明るい未来を思い描く力を与えてくれた 他の曲でもいいから筒美京平の曲をこの場でヒデキの声で聞きたかった

同じようにこの場で聞きたかったけれど惜しまれつつ亡くなった方がいる 桑名正博 尾崎紀世彦など それ以外にも様々事情があるのか 本人以外の歌唱で登場した曲もある でもやはり 少年隊の仮面舞踏会や田原のトシちゃん 小泉今日子 薬師丸ひろ子 TOKIOなど 本人の歌っているところ見たかった 欲張りすぎか でも 藤井隆は田原俊彦へのリスペクトと 自分が代わりに歌う事への複雑な気持ちが伝わって全力で応援したくなりました

作曲家としての筒美京平もすごいけれど 作詞家の 阿久悠 松本隆 なかにし札この方たちの持つ言葉の力に脱帽です その当時は自分は子供で歌詞の意味が分からずに歌っていたけれど 大人になった今になってその歌詞の意味を噛みしめてみると驚いてしまう事がある 太田裕美さんの⦅木綿のハンカチーフ⦆はCDでは 何度も聞いていたけれど 生の歌唱力で聞かされると はかなさが伝わって涙がでそう 1曲の中でドラマが完結している

昭和の歌謡曲の奥の深さには驚くばかり 昭和の時代の日本人に生まれてこのような歌とともに育った自分は幸せだと納得できた きっとフィナーレは ⦅また逢う日まで⦆だよね 本人亡くなっているから出場予定者リストでは 松崎しげるしかいないよねと妻に話しかける

個人的なベスト5は早見優 ⦅夏色のナンシー⦆ 岩崎宏美 ⦅シンデレラハネムーン⦆ CCB⦅ロマンチックが止まらない⦆ 松本伊代 ⦅センチメンタルジャーニー⦆ 大橋純子(大病を克服されたそうで何よりです) ⦅たそがれマイ・ラブ⦆ 中村雅俊 ⦅時代遅れの恋人たち⦆ 野口五郎(食道がんだったそうで)⦅グッドラック⦆ 
そして何といっても ジュディオング 1979年レコード大賞受賞曲⦅魅せられて⦆ あの畳みかけるようなイントロから始まり まばゆいバックライトの中スモークがたかれ何とも芸術的で幻想的な舞台から おなじみのプリーツたくさんの特徴的な衣装で飛び立つように羽を広げながら登場 もうそこは異次元の世界 レーザー光線とスパンコールがきらきらしてまぶしいくらい 会場大興奮 これが見たくて今日秦野から来ました ♪Wind is blowing from Aegent♪ be動詞に動詞の原型にingがついた現在進行形だ

なんといってもご本人がきれい おいくつになられたのだろう艶っぽい 菩薩のような強烈な母性を感じる ♪やさしい人に抱かれながらも強い人にひかれていく ンーンンー ハァーアー♪ こんなの見たことない この世のものと思えない 大迫力に思わず手を合わせて拝みだすおじいさん 冥途のお土産ができたね

番外編だけど 浅田美代子の良さが初めて分かった ご存知の方も多いでしょうが お世辞にも歌唱力があると言えない 当時もいろいろ揶揄されていたけれど だけど多くの歌唱力のある方々の中で堂々と フルバンドを従えてあの歌声を披露されたはご立派 この方の場合うまく歌ってはいけないのかも 自分らしさを貫いて 最後まで歌い上げることで伝えるものがあることがわかっていらっしゃるなら これもプロの技か 動かしてはいけない世界観だ 決してうまくなくても伝わるものがあることに気が付かせてもらいました

そして最後はやはり ⦅また逢う日まで⦆ 参加者全員をバックに声量大魔王の松崎しげる歌唱だ

それにしても何とも贅沢な時間 休憩はさんで4時間近く 一生に一度しか会えないスターの最高のパフォーマンスを堪能しました 昭和の歌謡曲が力を持っていた時代の紅白歌合戦を何年分か生で見たような得した気分

みんな当時と変わらないキレのある動き容姿と歌声 維持されるのに大変なのかもしれないがプロのすごさを見せつけられました 観客の多くの方が自分もまだまだと勇気をもらったのかもしれません

好評につき再演となったら ぜひ受験が終わった平成生まれの子供たちも連れて行こうと思う 昭和の時代に詳しい昭和の香りがする平成生まれの子供たちならこの良さが分かってくれるはず

それまで皆さん また逢う日まで お元気で