2017年12月 院長の私と歯周病学会所属の歯科衛生士2人の計3名で冬の京都に行ってきました。それぞれ手分けをして多くの講演を聞き、時折観光も交えながら時間を過ごし、患者さんへ還元できるように報告書を作成して、医院内で発表しました。
以下はその概要です。

「歯周病を撲滅!」宣言

改めて言うまでもなく歯周病は病気です。
顎骨が溶けて歯を失うことにより生命を維持するために必要な摂食機能が低下をおこす病気です。

顔貌も変化し話も出来ず、口臭によって人と接触することも拒絶され、
生活の質が大きく低下
するまぎれもない病気です。しかしこの病名は知られていても、病気の中身に対しての認知度は驚くほど低いのです。

この病気に対して治療をすることが出来るのは当たり前だが歯科医院をおいてほかにありません。
だからこの学会は社会的な使命、貢献の度合いが高い学会なのです。
しかしこの病気を正しい方法で治す医院も少ないのは事実です。

国民の70~80%が罹患しているということが言われていますが、そのデータとしての根拠はどうやらレセプトから上がっているデータです。
したがって私見ですが、レセプトデータを根拠にしているのであればこの比率はもっと低く見積もるべきではないのでしょうか。

更に中等度以上に進行している人の割合はそれほど多くはないものの、高齢者の中で歯周病に進行している人の割合が増えています。
正しい歯周病医療を受けている人が少ない現状で、今後高齢者の比率が高くなることが予測されているので、中等度以上の歯周病患者は増加するものと予測されています。

これがこれからのターゲット

【京都駅のクリスマスツリー】

学会は60周年記念ということで、歯周病撲滅に向けて華々しく京都宣言を行いました。意気込みは素晴らしいです。
具体的な実行のための対策の中で特に目につくキーワードは「科学」「情報発信」「学会としての役割 認定医 専門医 認定歯科衛生士の使命」「連携」「歯周医学(歯周病が全身にどのように影響するか)」です。

歯周医学に対しての講演をいくつか聴講してみましたが、演者である医師も歯科医も「~という関連がある」「~という報告がある」という表現にとどまり、明確なエビデンス・根拠を提示することはありません。

医師との「連携」をとるためには、もちろん歯周病を科学的に理解・説明できないといけないし、医科と共通言語で会話できないといけません。
医師・看護師に受け入れられるためには共通言語、つまり検査値であったり、客観的な画像データなどが揃えられないと説得力がありません。

同じ土俵に立てるかどうか、そこを踏まえないで「全身と関連がある」と主張しても医科の先生方には響かないかもしれません。
当然、医師には歯周病という病気を治すことはできません。
本当に歯周病という病気が全身状態に深くかかわるのであれば、医師は歯科医に歯周病を治してもらわなければ困るはずです。

糖尿病にしろ、心臓病にしろ医師の治療成績が歯周病の治療結果に左右されるのであれば、糖尿病専門医・心臓病専門医はその治療結果を歯科医師に依存することになります。
医師はそのプライドにかけて歯科医師に対し歯周病の治療を依頼するわけであるが歯科医が歯周病を治せなければ困ります。

医師・看護師と対等の医療レベルを提示しなければ、歯科医療の評価は上がることはありません。
治ったとは何か?一人一人の歯科医・歯科衛生士がその付託に耐えられるかどうか。そこまで思いを巡らすことが出来るのか。
もしかして「恥ずかしい限りである」という事であれば、何かを変えないといけません。
医科歯科連携に耐えられるのか、本当に病気を治せるのか。治ったとはどんな状態なのでしょうか?

「歯科医師と歯科衛生士は歯周治療の基本をそれぞれ大学と専門学校で学んできたにも拘らず、卒業後の進路によっては正当な歯科医療を全く経験できなかったり、間違った歯周治療を行っていることが少なくありません。
そのため今でも歯周病専門医 認定医 認定衛生士の養成は喫緊の課題です。」

「歯科医療のほとんどが小規模な診療所で提供されており、新しい概念や技術が広く正確に伝えられるのに時間がかかります。」

「問題意識をもっている人はこの学会に参加して研鑽を積んでいるけれど、本当に大切なのは問題意識もなく漫然と歯周病治療をしている多くの歯科医・歯科衛生士であり、どのようにすればそのような多くの歯科医院に正しい情報が伝わるかです。」

「歯科衛生士は自らの業務が診療報酬にどのように結びついているか、積極的に学んでこなかったように思います。」

などの発言が講演者からありました。

【平等院 鳳凰堂】

結びの言葉は
「科学を普及させる新たな体制つくり」という革新によって
「歯周病を撲滅!」にむけて宣言する、でした。

一言でいうと、「歯周病を科学する それを広く伝える」ということでしょうか。

その言葉をそのまま自分なりに解釈すれば「科学的に正しい事実をいかにわかりやすく多くの人に情報発信をして初発予防・再発予防をして学会の提唱する科学的に正しい治療指針を根拠に標準治療をするか」という事です。

できるだけ連携をする。他の医療職 医師・看護師・栄養士・薬剤師・地域の人々・学校・歯科医と歯科衛生士などと連携して正しい情報を発信する。
認定医・認定歯科衛生士として社会的役割があり、中等度以上に重症化しつつある患者さんに一日も早く正しい情報が伝わり、出会い進行を停止させ、義歯に依存せざるをえない生活から救い出さなければなりません。

さらにワクチンがない現状では、知識そのものがワクチンであり、多くの人に初発予防の知識が普及するように積極的な情報発信が出来る人はそれをやらなければなりません。

番外編です

私たち3人は学会2日目の朝少し早起きして、「日本一の朝ごはん」とよばれるお店でそれはそれはおいしい朝ご飯を頂いてきました。
つい重ねてお替りをしてしまうほど、至福の体験をさせていただきました。ありがたいことです。

その報告もお読みいただけますでしょうか。

日本一の朝ごはん 喜心

食べること
食べることは生活しているうえで最大の楽しみ
元気と健康を作る

メンタルが弱っている人もこのようなご馳走をとることによって活力が戻ってくるのかも
このようなご馳走を目の前にしても食欲がわかなければそれも悲しい

まさに命のスープ
一本の点滴よりも一杯のスープ

食べることによって初めて命はつながっていく
食べられなくなった時 食べることを拒否した時に死に向かい合い始める

好きなものがこれからずっと食べられない こんな悲しいことはない

幸福の尺度は「命の長さ」だけでなく「命の質」も大切 笑っていられる間は幸福
笑っておいしいものをみんなで食べている時間は間違いなく幸福で豊かな時間
歯科医療はそんな幸福な時間を作りだせる仕事

平等にどの人も1日3回空腹になるし その空腹を食べたい物で満たされることは
どんな人にも与えられた幸福を得られるということ

食べることが生きる意味を問いかける事がある

特に高齢になるほど 健康回復が大切な時ほど【食べる】ことの意義は大きい
歯がなければ食べられない 食が生命に直結していることに説明はいらない 歯がその主役であることも論を待たない

生きることは食べること

美味しいものは好きですか?

美味しいものを食べることは次のがんばりのエネルギーを作ります。
私たち歯科医療従事者は健康な歯を有しているので、歯が悪くて食べられない人の気持ちが本当のところで共感できないかもしれません。

口の問題で困っている人から頂いた治療費で、私たちはこのような美味しいものを何不自由なく存分に味わわせてもらってます。
「ちゃんと治療をしている」という想いがあるから後ろめたさを感じないで料理を味わうけれど、ちゃんとやってなくて手を抜いたり、手が荒れていたり、手を汚したり、で結局患者さんを治してなければ、それは患者さんの食べるという楽しみを奪っていることになります。

それでもらった治療費で美味しいものを食べているとしたら、そのような感性があれば、それでもこのような幸福を味わえるのでしょうか?

ちゃんとやっているか、独りよがりになっていないのか、外の世界、例えばこのような学会に出ることも必要です。

このようないい思いをしたらそれを多くの人にも体験してもらいたい。
もちろんこのお店でなくてもいいから本当に食べたい物を食べられる幸福を出来るだけ多くの人に提供できるようにしたい。

それは私たちの仕事。私たちにしかできない仕事。
美味しいものを食べていますか?こんな声掛けもいいかもしれません。

おいしい食事はレストランへ。おいしく食べるには歯科医院へ。

歯が健康で働いてもらわないと命がつなげない。
どんなにおいしい物食べたい物が目の前に並んでいても歯がなければ味わうことが出来ない
歯の健康を取り戻したら何を食べたいですか?

おいしいものを食べられるように私たちと一緒に病気に向かい合いましょう。
このような言葉がけもできるようにならないといけません。

高い値段設定だけれども払った対価以上に得られる価値が十分にあった消費でなく投資であれば、
贅沢は後ろめたいものでなくむしろ必要な事です。

職場、医院を離れた様々な体験が視野を広げ視点を変えることにつなげられるのであれば、それは必要なことです。
自分がいい思いをしたらそれは独り占めしないで患者さんにも還元できるように工夫しましょう。

いろいろな気付きをいただきました。ごちそうさまでした。