最近のテニス界は、錦織圭君という新星の登場、伊達公子さんのウィンブルドンの出場といった話題が続き、少しずつ活況をおびてきました。
私もいくつかのスポーツをしてきましたが、一番のめりこんで奥の深さを感じたのがテニスでした。私のテニスの楽しみは一言で言うと、なりきりテニス至上主義です。勝敗は二の次で、プレー中に一瞬でも、憧れのスーパースター達と同じようなプレースタイルになりきれたと錯覚できたその刹那に、体中の快楽物質がちびっと放出されます。
サービスのフォロースルー右ひじの角度はボリスベッカー、ストイックな顔の表情はビヨンボルグ、大げさなガッツポーズと雄たけびはジミーコナーズ、シングルのバックハンドテイクバックのラケットヘッドの角度はステファンエドバーグ、そしてフットワークはマイケルチャン、ツーバウンドするまではあきらめません。最近のテニスを始めた人にとっては何のことかさっぱりわからないかもしれません。これがピンと来る人はもういいおじさんかおばさん。
私のテニスでの自慢は現役のボルグ、コナーズ、マッケンローの試合を見た事があるということです。特にスウェーデンが生んだスーパースタービヨンボルグは私のテニスのカリスマでもあり、フォアのトップスピンは私もまねさせていただきました。体力もかえりみずに。当時つまり私の高校生のころのボルグはウィンブルドン5連覇をなしとげたまさに彼の時代そのものでした。それだけに突然すぎる引退はとてもびっくりしたことを鮮明に覚えています。
まだ20代半ばで巨万の富と名声と美人の奥さんを手にしたまま引退セレモニーをおこなった代々木体育館で私もその目撃者となりえたことは幸運でした。
しかし、その後漏れ伝え聞くボルグの動向は悲しい知らせのラリーの応酬。事業の失敗、巨額の借金、美人の奥さんとの不仲、離婚など。おそらく彼はテニス一筋のテニス馬鹿であったのかもしれない。かわいそうに誰かにうまく利用されたのかもしれない。あるいは誰かにだまされたのかもしれない。借金返済のためと噂されれ現役復帰を試みたがそれも失敗。なんとメリハリのきいた人生でしょう。偉大なカリスマがボロボロになっていく様は見るに忍びないの一言です。
人生成功し続けることはいかに難しいか、彼は皮肉にも体を張って私に教えてくれることになりました。
私は彼のテニススタイルは錯覚とはいえ真似できたような気がしましたが、この生き方は真似できないでしょう。そんな強さは私にはありません。
つい最近どうやらマッケンローが現役バリバリのフェデラーとエキシビジョンをしたという噂を聞きました。たぶんおそらく50代をいくつか越えたであろうボルグ、現役時代に彼に熱狂した皆さん、見たくありませんか? 素敵なおじさまになっているのかもしれないボルグを。やっぱりラケットはドネーボルグプロでしょうか? ウッドラケット以外私は想像できませんけど。